本記事では、コーチングに興味がある方、コーチングを学んでみたい方が理解しやすいよう、コーチングのエッセンスをわかりやすくまとめました。「コーチングとは何か」「どのように行うのか」「どんな効果が得られるのか」が理解できます。
また、コーチングは非常に有用なスキルですが、弱点もあります。コーチングの弱点と、それをカバーする方法も、あわせてご紹介します。
目次
- コーチングの語源と歴史
- コーチングとは何か?
- コーチングの三原則
- コーチングのやり方・方法
- コーチングで得られる効果
- コーチングと他のメソッドとの違い
- コーチングの弱点
1.コーチングの語源と歴史
コーチングとは何かを知るために、まずはコーチングの語源と歴史をご紹介します。
■コーチングの語源
コーチの語源は「目的地へ連れて行ってくれる馬車(coach)」からきています。コーチという言葉は、現在、スポーツの世界でよく使われており、一般的に選手に技術的な指導をする人を指します。しかし正確には、選手に技術を教える人は、コーチではなくインストラクターになります。
インストラクターが単に技術を教えるのに対し、コーチは精神面をはじめ、さまざまな角度から、選手の目標達成を手助けする存在です。語源の通り、「目的地まで連れて行ってくれる人」といえます。そんなコーチが行うコーチングも、語源の通り、「目的地まで連れて行ってくれる技術」なのです。
■コーチングの歴史
コーチングの発祥はアメリカです。主に1970年代に、優秀なスポーツコーチが、普段、選手にどのような声かけや接し方をしているのかが研究され、コーチ達の行っていたコミュニケーションスキルをまとめたのが、コーチングの始まりです。
コーチングは、最初は個人を中心に広まりましたが、やがてビジネスの世界で能力開発のメソッドとして注目を集めるようになります。1990年代半ばには、アメリカの大企業でもコーチングが導入され、それをきっかけに、多くの欧米企業が、人材開発のツールとしてコーチングを活用し始めます。
1990年代後半には、日本にもコーチングが入ってきます。企業で、管理職向けの人材開発の手法として普及するほか、自己啓発、自己成長を促すメソッドとしても、知られるようになります。
現在では、ビジネスの分野だけでなく、教育や育児、医療といった幅広い分野で、コーチングが活用されています。コーチングに関する本やコーチングが学べる講座も増えています。また、コーチングが広まったことで、コーチという職業も認知され、コーチ育成機関も数多く存在しています。
日本でのコーチングの歴史はまだ浅いですが、人材開発、自己成長を促すメソッドとして、幅広い分野で人気が高まっています。
2.コーチングとは何か?
コーチングは、どのように定義され、どんな特徴があるのでしょうか。また、何のために行うのでしょうか。コーチングの定義と特徴、目的を、それぞれご説明します。コーチングにおけるコーチの役割についても、あわせてご説明します。
■コーチングの定義
コーチングとは、対話という手段を使って、クライアントの夢や目標を明確にし、その達成を支援する人材開発、能力開発のスキルです。
対話では、主にコーチからクライアントへ「質問」が投げかけられます。コーチがクライアントに適切な質問を繰り返すことで、クライアントが叶えたい目標は何なのか、その達成のためには何が必要で、どのように行動すればよいのか、クライアント自身が気づくよう促します。そして、クライアントが、自発的に、目標達成のために必要なマインドやスキルを身につけ、目標に近づけるよう支援を行います。
■コーチングの特徴
目標達成を支援するメソッドは、コーチングの他にも数多く存在します。その中で、コーチングというメソッドの大きな特徴は、「目標」から「目標達成のための具体的な行動計画」まで、すべてクライアントに決めてもらう点です。コーチとの対話を通して、クライアント自身に、どうしたらいいか答えを導き出してもらいます。
そのため、コーチングでは、基本的に、コーチがクライアントに具体的な目標の達成方法を教えたり、自分の価値観でアドバイスを行うことはありません。コーチは、あくまでもクライアントが能動的に目標に向かって前進していけるよう、対話を通してサポートを行うにとどまります。
コーチングのセッションは、通常、コーチとクライアントの二名で、対話形式で行われます。セッションというかたちではなく、日常生活でコーチングを使うこともできます。叶えたい目標があったり、課題を抱えている相手に、どうしたらいいか自分で考えさせたい場面で活用できます。また、自分自身にセルフコーチングができるのも、コーチングの特徴の一つです。
■コーチングの目的
コーチングの目的は、対話を通してクライアントに「気づき」を与えることです。
コーチングでは、対話を重ねることで、クライアントに「望む状態」や「本当の思い」「使えるリソース」「自分の可能性」といった事柄について、新たな気づきを与えます。具体的には「自分は本当はこう思っていたんだ!」「本当はこれがやりたかったんだ!」「自分にはこんなこともできるんだ!」といった、クライアントにとって大きな気づきです。
普段の生活の中では、このような気づきを得ることは、なかなかありません。ですが、コーチと対話を重ねることで、徐々に頭の中が整理され、これまで意識していなかった思いや考えに気づくことができるのです。
コーチングでは、この気づきを踏まえて、クライアント自身に「自分はどうなりたいのか」「そのために、どうすべきなのか」をじっくり考えてもらいます。そして、自分で目標を設定し、目標達成に向けてどのように行動していくかを決めてもらいます。
「気づき」は、コーチングにおいて、クライアントの目標達成への道しるべとなる、非常に重要な要素です。
■コーチの役割
コーチは、単にクライアントの目標達成を支援するだけでなく、クライアントを、人間的にも成長へと導く役割を担っています。
コーチは、セッション中、「今抱えている問題は何なのか」「どんな未来を望んでいるのか」「そのために今すべきことは何なのか」クライアントに多くの気づきを与えます。このようなセッションを重ねることで、クライアントに自分で問題を解決するリソースを身につけさせます。そして、最終的には、コーチなしでも目標達成や問題解決ができるようになってもらうことを目指します。
このように、コーチングは、クライアントの可能性を伸ばし、長期的な成長を促すことも視野に入れて行います。そのためコーチは、目標を達成した後のクライアントの姿も見据えて、セッションに臨まなければなりません。
コーチングでは、対話を通してクライアントに新たな気づきを与え、クライアントが望む状態へ向かって前進するのをサポートします。また、セッションを通じて、クライアントの長期的な成長も促します。