コーチング&ヒューニングを学ぶ

コーチングの三原則と求められるスキルとは

コーチングには、守るべき原則や、正しいやり方・方法があります。この記事ではコーチングの三原則をお伝えした上で、コーチングのやり方・方法についてお伝えいたします。

コーチングの三原則


コーチングでは、コーチがクライアントと関わる際、守るべき原則があります。コーチングの三原則といわれる「インタラクティブ(双方向)」「テーラーメイド(個別対応)」「オンゴーイング(継続性)」です。

この三つは、それぞれが深く関係しており、どれか一つ欠けては意味がありません。三つすべてを実践することで、コーチングの効果が発揮されます。

■ 原則❶インタラクティブ(双方向)

「インタラクティブ(双方向)」とは、クライアントと対等な立場でコミュニケーションをとることです。

コーチングでは、対話を通じてコーチとクライアントが関わりあいます。この関わりあいでは、お互いが対等な立場で、一方通行ではない、双方向のコミュニケーションを行うことが原則となります。

どちらかが一方的に話したり、聞いていない場合は、双方向ではありません。自らの先入観に基づいて相手の発言をジャッジしたり、アドバイスをしたりするのも、一方通行のコミュニケーションとなります。

一方通行のコミュニケーションでは、効果的な気づきが起こりにくいため、コーチングの成果が得られません。コーチとクライアントが、対等な立場で対話を重ねることが有効なコーチングにつながります。

■原則❷ テーラーメイド(個別対応)

「テーラーメイド(個別対応)」とは、クライアント一人ひとりに合わせた対応を行うことです。

コーチングを行う際、目標が全く同じだったとしても、その達成のための効果的な方法は、一人ひとり異なります。Aさんでは成果が上がったやり方が、Bさんには全く効かないというケースはよく起こります。なぜなら、人は一人ひとり違い、目標達成の方法も、クライアント個人の行動パターンや思考パターン、経験値などによって大きく左右されるからです。

そのため、医療の分野における、遺伝子診断に基づいて患者一人ひとりに合った治療法を設定する「テーラーメイド医療」のように、一人ひとりのクライアントを丁寧に観察し、その人だけにカスタマイズされたコーチングを行う「個別対応」が求められるのです。

■原則❸ オンゴーイング(継続性)

「オンゴーイング(継続性)」とは、クライアントと継続的に関わりつづけることです。

たった一度のコーチングで、クライアントの目標を達成まで導くのは、現実的に困難といえます。一度コーチングを受けて、そこで気づいたことを行動レベルまで落とし込み、その後自分で実践しつづけられる人はなかなかいないからです。なので、クライアントに、目標達成に必要となる新しい考え方や行動が定着するよう、継続的に支援しつづけていく必要があります。

また、継続的にクライアントと関わっていれば、目標達成の過程で起きた状況の変化にも即座に対応することができます。個別対応をするためにも、より深くクライアントを理解できるよう、関わりつづけることが重要です。

双方向のセッションを、クライアントに合わせた個別対応で、継続的に行うことで、コーチングが有効に機能します。

コーチングのやり方・方法




■「対話」を重視するコーチング

コーチングでは、基本的にコーチとクライアントの二名が、セッション形式で対話を行います。

コーチング・セッションでは、コーチングの三原則をもとに、目標の決定から目標達成に向けた行動計画作成まで、すべて対話を通して行います。なので、セッションでは、クライアントから上手く話を引き出すこと、クライアントに多くの気づきを与えることが重要です。そのため、コーチは「質問」「傾聴」「要望」「承認」「フィードバック」といったスキルを使用します。またクライアントに信頼して話してもらえるよう、「ラポール」を築いておくことも大切です。

良い対話を行い、クライアントに効果的な気づきを与えられるよう、コーチは日頃から、必要なスキルの訓練をしておかなければなりません。

■対話に求められる主なコーチングスキル

質問:
クライアントの持つ考えや価値観、目標を特定したり、視点を広げて新たなアイディアを引き出すために、効果的な質問を行うスキルです。クライアントは、コーチからの質問に答え続けることで、頭の中が整理され、視点が広がり、さまざまな気づきを得ます。コーチは、できるだけ多くの気づきを与えられるよう、クライアントの状態をよく観察し、どのタイミングでどんな質問をしたら効果的か、判断しなければなりません。コーチの質問スキルがコーチングの成否を左右するといえるくらい、重要なスキルです。

傾聴:
クライアントの状態を観察しながら、先入観を持たずに、クライアントの話を全力で集中して聞くスキルです。クライアントが話しやすいよう、適宜「聞いている」というサインを送りながら、最後まで口をはさまず、話に耳を傾けます。また、話の内容だけでなく、クライアントの表情や声のトーンなどの非言語情報にも注目し、クライアントが本当に言いたいことは何か、話す目的や意図までを見極め、理解することが求められます。

要望(リクエスト):
クライアントが、潜在意識の中で、当然できないと思い込んでいる目標や手段を、選択肢に加えてみるようリクエストするスキルです。クライアントが無意識に作っている制限を超えた選択肢を提案することで、クライアントの可能性を大きく広げることができます。要望は、短くストレートに伝えるのがポイントで、指示や命令口調にならないよう注意が必要です。なお、リクエストを受けるかどうかはあくまでもクライアントの自由となり、強制はできません。

承認(アクノレッジメント):
クライアントのモチベーションや自己効力感を高めるスキルです。クライアントに成長がみられた際や、成果が上がったときに、クライアントに起きた変化を、言葉に出して伝えます。言葉にされることで、クライアントは自身の成長を実感することができます。また、日頃から存在自体を承認する声かけを行うことも大切です。存在自体を承認する声かけとは、あいさつをしたり、名前を呼んだり、話しかけたりすることです。ごく当たり前の行為ですが、非常に効果的な承認方法です。

フィードバック:
クライアントの状態や発言に対し、コーチにはどう見えたか、どう感じたかを伝えることで、クライアントが客観的に現状を把握できるよう促すスキルです。適宜フィードバックを行うことで、目標達成までの道のりの中で、今自分はどこにいるのか、どんな状態にあるのかに気づけ、現状認識を新たにできます。フィードバックを行う際は、内容を正確に伝えるよう注意します。以前感じたことなのか、今の状態について言っているのか、クライアントが分かりやすいよう的確な表現を心がけます。

ラポール:
ラポールとは、信頼関係のことです。クライアントがコーチに対して「この人にだったらどんなことでも話せる」という安心感を持っていると、コーチングの成果が出やすくなります。信用して話してもらえるよう、コーチは、常に自分の発言や態度に注意を払う必要があります。クライアントを良く観察し、クライアントのペースに合わせた会話をするよう努めます。声のトーンや顔の表情、姿勢などもクライアントの波長に合わせ、信頼感を作り出す働きかけを行います。

セッション中、クライアントにどれだけ話してもらえるかが、コーチングの成否を握る重要な鍵となります。


■対話で、潜在意識の本当の望みを引き出す

コーチングで対話が重視されるのには理由があります。それは、クライアントとの単純な会話の中では、本当の望みが、答えとして出てこないケースが多いからです。

意識して口に出す望みと、潜在意識の奥深くで本当に望んでいることが異なるのは、よくあることです。また、口に出した目標が、「すべき目標」であってクライアント自身が心から叶えたい目標ではないことも多いです。そのため、丁寧に対話を行い、クライアントの真の望みを引き出す必要があります。

例えば、クライアントの口から「痩せたい」という目標が出た場合、これを掘り下げて、なぜそれを実現したいのか、実現したら何が得られるのかを聞いていきます。すると「綺麗になりたい」「綺麗になって結婚したい」といった別の望みが出てきます。さらに掘り下げると「家族を安心させたい」などの新たな思いが出てきたりもします。これらを聞いた上で、クライアントが本当に叶えたい目標は何なのか、対話を重ねて導き出していきます。

人は、本当にやりたいことでなければ積極的には動けません。そのため、間違って、クライアントの本当の望みではない目標を設定してしまうと、当然行動が伴いにくく、コーチング自体意味のないものになります。

その他にも、そもそも、クライアントの口から目標やなりたい姿が出てこない、というケースもあります。そんなときにも、対話を通して潜在意識にアクセスし、クライアントの内側から答えを導き出します。「どんな感情で毎日を送りたいか」「人生で一番大切にしているのは何か」など、価値観に触れた質問を行って気づきを与え、クライアント自身に目標を決めてもらいます。

クライアントの潜在意識の中にある本当の望みを知るために、丁寧に対話を重ねます。

■コーチング・セッションのプロセス

コーチングのセッションは、以下のようなプロセスに分けて行われます。どのステップにおいても、対話を通して、クライアントが自分で考えて答えを出すことを促します。

  1. プレ・コーチング
  2. 目標を明確にする
  3. 現状を明確にする
  4. ギャップの原因を分析する
  5. 行動計画を作成する

[プロセス-1]

プレ・コーチングクライアントが安心してセッションに臨めるよう、準備を行います。コーチングについての説明をしたり、セッションの進め方や約束事の確認を行います。また、セッションの効果を高めるため、クライアントと信頼関係を築く働きかけも行います。コーチは、自分がどんな人間かを話す自己開示をしたり、軽く会話をしたりして、クライアントの緊張を解いていきます。

[プロセス-2]

目標を明確にするまず始めに、セッションを通して実現を目指す目標は何なのかを明確にします。クライアントの真の望みを特定する、非常に重要なステップです。目標は、ぼんやりとした理想でなく、クライアントがはっきりとイメージを描けるよう、細かく具体的に設定します。

[プロセス-3]

現状を明確にする特定した目標に対して、現在クライアントはどの段階にいるのか、現時点で目標にどのくらい到達しているのかを把握します。クライアントの自己評価と合わせて、周囲の人の意見もヒアリングして、現状を明確にしていきます。

[プロセス-4]

ギャップの原因を分析する目標と現状にあるギャップの原因を分析します。今現在、目標に到達できていない原因が特定できれば、解決策もみえてきます。クライアントが自覚している原因だけでなく、他に原因は見当たらないか、根本の原因は何なのか、対話を重ねて追究していきます。

[プロセス-5]

行動計画を立てるギャップの原因を解決し、どんな行動をとったら目標が達成できるのかを考えます。使えるリソースがあるかどうかも、あわせて吟味します。そして、具体的な行動計画を立てていきます。計画は実行できなければ意味がないので、クライアントに無理のない範囲の、行動に移しやすい内容にするのがポイントです。

コーチングでは、夢や目標を明確にするだけでなく、達成までの具体的な行動計画を立てることができます。

■ コーチングで得られる効果

コーチングのセッションを受けたり、コーチングを学んだりすると、以下のような効果が得られます。

  • 目標が明確になり、人生の方向性が定まる
  • 自分が本当に考えていることがわかり、頭の中がスッキリする
  • 自分を客観視できるようになり、物事に冷静に対応できる
  • 定期的に承認してもらうことでモチベーションが上がる
  • 自分の可能性に気づくことで、潜在能力が引き出される
  • コミュニケーション能力がアップし、人間関係が良好になる
  • 自分で答えを導き出す習慣がつき、主体的に行動できるようになる

対話を通して気づきを得ることで、自分の価値観やビジョンが明確になります。悩みや迷いが少なくなり、毎日を主体的に、いきいきと過ごせるようになります。

その他にも、コーチが行う「傾聴」「質問」「提案」「承認」などのスキルを習得すると、コミュニケーション能力がアップします。そのため、周囲の人との関係が良くなるという効果があります。

また、コーチングは、自分自身に行うこともできます。セルフコーチングができるようになると、身近な問題を自分で解決する力が身につきます。

コーチングは、考えを整理したり、本当の望みや思いに気づかせてくれるだけでなく、人間的な成長も促してくれるメソッドです。

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